vol.14 Abercrombie & Fitch / Ernest Hemingway

Date: 2016年5月3日 Category:


アバクロンビー&フィッチとアーネスト・ヘミングウェイ


 20世紀初め、ニューヨーク近郊に住む富裕層には、アフリカに行って、フィッシングやハンティングなどを楽しむ人が多くいました。当時の交通手段は船であり、現地には店舗などはなく、銃や地図、水筒、その他の道具を現地で揃えることが困難でした。

 アバクロンビー&フィッチの有名な顧客に、アーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961)がいます。
 いわずと知れた20世紀を代表する文学界の巨人で、ヘミングウェイほど大衆の心をとらえた作家はいないでしょう。彼がJ・F・ケネディやジェームズ・ディーンらと並び20世紀アメリカのアイコンとして多くの人々の記憶に留められ続けているのは、彼の文学的功績と商業的な成功はもちろんですが、ハードボイルド・リアリズムと評された乾いた冷徹な文体や作風に相応しい豪放磊落でマッチョな風貌、1920年代のパリのアメリカ人としての暮らし、欧米でアフリカ熱が高まる中でのサファリ旅行、闘牛、闘鶏、競馬など血なまぐさい競技やギャンブルを好んだ嗜好、酒にまつわるエピソードの数々など、そのライフスタイルが魅力的だったからに他ならないでしょう。

 ヘミングウェイは行きつけのホテル、BAR、カフェ、レストランなど、飲食に関しては小説やエッセイで折にふれ登場させていますが、なぜかお気に入りの服屋やショップに関しての記述はほとんどありません。しかし、アバクロンビー&フィッチだけは、店での買い物の様子がたびたび描かれています。

 現在のラグジュアリーなカジュアルウエアを扱うブランド&ショップとしてのアバクロンビー&フィッチしか知らない人はピンとこないかも知れませんが、現在のようになったのはリミテッド社が新たなコンセプトでアバクロンビー&フィッチ再生を図った1988年以降のことで、もともとはニューヨークのアウトドアとスポーツを愛する富裕層向けのショップだったのです。

 ヘミングウェイも、釣り、狩猟、キャンプなどのアウトドアに少年時代から慣れ親しんでおり、彼にとってアバクロンビー&フィッチは10代後半のころからの行きつけの店だったのです。ヘミングウェイは、道具としての実用性や機能性、品質に重きをおき、ひとたび良いものだと納得すると金にいとめをつけず買い求め愛用する人物でした。
 そのことからも当時のアバクロンビー&フィッチが、いかに品質の高い商品を扱っていた店だったかがわかります。

 
アバクロ_ヘミングウェイ

 


 アバクロンビー&フィッチは、「冒険心」という男心をくすぐる魅力的なブランドだったことが川上さんへのインタビューとヘミングウェイのエピソードから、おわかりいただけたと思います。高品質な商品を扱う本格アウトドアブランドとしてのアバクロンビー&フィッチを、今後も東京ヴィンテージでは紹介していきたいと思っています。

 
 


※参考書籍
ヘミングウェイの流儀 著者:今村楯夫、山口淳 発行:日本経済新聞出版社