vol.12 アメリカの鉄道時計

Date: 2016年2月4日 Category:

懐中時計の長い歴史の中で、最高級の精度・品質を持つ、アメリカの鉄道時計。

 
アメリカの時計産業の始まりは1850年代にさかのぼります。
1851年ウォルサムの前身会社が設立されて以来ハワード、エルジン、イリノイ、ハンプデン、ハミルトンといったウォッチメーカーが誕生しました。
 
懐中時計の時代、これらの各社は競ってハイグレードな機種を作り上げ、今日それらは貴重なものとして伝えられています。
懐中時計の歴史において、品質の高さや仕上げの美しさは全世紀終わり頃の、アメリカの懐中時計が世界のトップといっても過言ではないのです。
 
しかし、日本では、時計というとどうしてもスイスの高級ブランドの知名度が高く、アメリカの懐中時計に関しての情報もほとんどないため、一般に時計好きの人々の眼に触れることが極端に少ないというのが現状です。
 
アメリカの鉄道時計が発展した要因としては、当時のアメリカが、資源的にも人材を考えても、ヨーロッパでは考えられないほど恵まれていたことがあげられます。
そしてもう一つ、大きな発展の理由が、鉄道との関係なのです。
 
当時アメリカの主要な交通機関は鉄道でした。
ここで問題になるのは、時間の管理であり、それは直接鉄道員が携帯する時計の質ということになります。
鉄道のスケジュール管理は鉄道員の持つ時計の管理にかかっていたのです。
そのような中、1891年にオハイオのクリーヴランドで起きた鉄道事故を機に1893年、鉄道時計の規格が定められました。
 
「鉄道時計規格について」
 
■オープンフェイスであること。
視認性を優先するため、蓋無しのケースとすること。
 
■18もしくは16サイズであること。
 
■17石以上であること。
 
■5姿勢以上での調整で一週間で誤差が±30秒以内
 
■華氏34度から100度での調整をしたものであること。
 
■ダブルローラーであること。
テンプの振り座“ローラーテーブル”が振り石用“ローラージュエル”と振り竿用“ガードピン”の2重になっているもの。これに対し、2つの振り座が1つのものをシングルローラーと呼ぶ。
 
■スチールエスケープホイールであること。
テンプの腕バランスアームが鉄で出来ているもの。テン輪の部分は温度補正の必要上、通常は鉄と真鍮の2重構造になっている。
 
■レバーセット(剣引き)
誤作動防止のため、鉄道時計は、ベゼルを回してカバーをとり、その下にあるレバーを引き出して竜頭で時間を合わせる。
 
■マイクロメーターレギュレーター(緩急微調整装置)があること。
これにより秒単位の調整が可能になる。
 
■5時、12時位置での竜頭巻きが可能であること。
 
■ムーヴメントのプレート裏にグレードを記載すること。
 
■白い文字盤に黒く太いアラビア数字を使用、黒く太い針を装備すること。
 
■ブレゲヘヤスプリングで、華氏30度で等時性調整を施した19石以上であることが望ましい。
 
さらに、1930年にはこれらの基準に
 
大きさは16サイズ、アメリカ製、19石以上、温度差調整、等時性調整、精度は同条件で、72時間で6秒かつ1週間でも30秒以内でなければならない。
 
という条件が加わりました。
 
また、鉄道時計の特徴としてもう一つあげられることが、当時これらの鉄道時計は鉄道員が買い取らねばならず、そのためにケースは金張りが多いことです。
金張りは、今日のメッキなどとは比較にならないほど耐久性がありますが、それでも金無垢よりはるかに廉価なものなので、現在も同様に手ごろな価格で手に入れることが可能なのです。
 
一部でデザインが近いために、鉄道時計として紹介されたものを見ることがありますが、本来、鉄道時計と呼べるものは、上記の条件を全てクリアしたものだけなのです。
時計の部品の名称や意味を知らなくとも、これだけの条件をクリアするとなれば、鉄道時計が非常に精巧なものであることを理解するのは難しくありません。
 
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HAMILTON RAILWAY SPECIAL
 
現代の機械式の時計と比較しても何ら遜色のない、むしろそれ以上の精度と品質を持ち、美しさも兼ね備える鉄道時計。
この時計が当時の鉄道の時間を刻んでいたと思うと、感慨深い気持ちにもなります。
腕時計の影に埋もれてしまっている今こそ、改めて見直してみる価値が鉄道時計(懐中時計)にはあると思うのです。
 

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商品・情報提供: 古時計Ⅲ
参考:http://www.antique-pastime.com/index.html